読書「GAY BERLIN」
1年ぐらい前ですかね、月刊誌Badiで「読まずにはいられない！」のコーナーを担当させて頂き、そのときに紹介した本です。
タイトル GAY BERLIN – BIRTHPLACE OF A MODERN IDENTITY
著者 Robert Beachy
出版社 KNOPF
第二次大戦前、ドイツのベルリンは世界でも有数のゲイ文化が花開く都会でした。
同性愛者の人権運動は1969年のアメリカ、ストーンウォール事件に端を発し……と考えられてしまうことが多いのですが、実はそれよりはるか前にヨーロッパではそうした動きはあり、この本も1867年、ドイツのカール・ハインリヒ・ウルリッヒスのカムアウトとそれに伴う法廷闘争などで幕を開けます（ちなみにウルリッヒスについてはホントに知られてないんじゃないかと……(泣)。可哀想過ぎる～～～～(泣)）。
個人的には1920年代、ワイマール共和国時代のベルリンのゲイライフというものが一体どういうものだったのか、という具体的な情報が欲しかったのですが、この本はそれよりもドイツにおける同性愛者の人権運動の歴史の概要が語られた本です。以前紹介した1910年代のゲイ映画「Different From The Others」に登場したヒルシュフェルト博士なども登場しますが、ワイマール共和国時代に花開いたドイツの、自由闊達なゲイカルチャーというものが、本当は薄氷の上に築かれたものだったということもよくわかります。またナチスの台頭には、ヒルシュフェルトの主張する同性愛者論（「男性の身体に女性の心が宿ったもの。女性の身体に男性の心が宿ったもの」）に対抗するように形成された、マチズム憧憬（平たく言えば、「野郎っぽいの最高！」的な……）のムーブメントが一助を担ってしまったこともシビアに説明されています。
色々な書評では、「Wikipediaを読めば書いてある」「昔出版された○○○に説明が出ていた」みたいなことを言われたりしていたのですが、自分にとっては「1920年代、ナチス台頭以前に、何故自由なゲイカルチャーがベルリンで花開いていたのか。そして、何故それが瓦解し、ナチスの元で同性愛者たちが大量虐殺されることになってしまったのか」の大きな流れを読み取るのに、とても有意義な本でした。
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