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[本]1932年のセックス・アンド・ザ・シティ…?

2015 年 2 月 16 日

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人工シルクの女の子

著・イルムガルト・コイン

 

結構ずいぶん以前に読んだ本です。
よもやタイトルはホントに「セックス・アンド・ザ・シティ」であるわけもなく(笑)。
「人工シルクの女の子」です。作者はイルムガルト・コイン。

 

うーわー、コインの日本語のWikiないじゃん(;´Д`)。
1932年にドイツで発表されているので、約90年前の本。
と、言うか、日本語訳が出ていることがとにかく素敵素敵!
日本語訳だけじゃなく、他にエッセー一編と時代背景などを説明した解説もついています。
これは英語版より断然オトクですのよ、奥様!
素敵素敵!
ありがとうございます!
こんなボクのために、本当にありがとう!ありがとう、世界!(何様だ、市川)

 

[あらすじ]
第一次世界大戦と第二次世界大戦間、ヴァイマル共和国時代のドイツ。ベルリンのモダンガール、ドリスはとにかく今の自分とは違う何かになりたいと思っている。仕事をしても、上司とはそりがあわず、男達とのセックスも上手くいったりいかなかったり。それでも「とにかく『キラキラ』になりたいのよ!」、セレブに憧れるドリスはそう思いながら日々生きている。

 

このあらすじ、何かに似ていませんかね?
「ブリジット・ジョーンズの日記」だったり、「セックス・アンド・ザ・シティ」だったり。
ところがこの本は、およそ100年近く前に書かれているものなのでござるよ。
主人公ドリスは「毛皮」がとにかく何より好きで、「SATC」のキャリーにとっての「靴」というアイテムに似ていたり。
舞台背景などを知らなければ、先月発表された本です、と言っても何の違和感も無い。

 

90年も昔、こんな瑞々しくてポップな文学があった。
それが何故90年近く喪りさられてしまったのか。
まさにそこには、ナチスドイツの台頭と第二次世界大戦に向けてのナショナリズムの高揚という原因があったのでした。逆に言えば、戦前、大戦間時代、1920年代から30年代初頭までは、これほどまでに瑞々しい文化が存在した、ということ(正確には単に瑞々しいだけではないのですが)。そして、それがナチズムとナショナリズムの嵐の中で消されてしまった、ということ。

 

イルムガルト・コインは盗作疑惑が発生して、処女作、2作目以外、実はそれほど評価が……ごにょごにょごにょ。40年代以降、70年に再度脚光を浴びるまでほとんど忘れられていたのだとか。しかしそんな中でも、「人工シルクの女の子」はナチスドイツによって禁書処分を受けます。「青少年の健全教育、社会の健全な発達を阻害する本」だということが理由です。

 

今読めば、全然普通なこと。
何故それが禁書処分にならなければならなかったのか。
何がそうさせたのか。

 

そのことを考えると、何だかなあって気持ちになったりでござるよ(´・ω・`)ショボン

 

追記:本書の主人公ドリスとブリジットやキャリーを絶対的に分かつものは、人生の選択肢の数かなあ。
ドリスはどんなに頑張ってもせいぜいタイピスト、という職業にしか就けまへん(でも当時としては全然おしゃれさんな仕事のひとつ)。で、それは技能の問題じゃなくて、どんなに頑張って才能があっても、地位のある役職はみーんな「男」のものだから。それが当時の社会のルールだったから。キャリーたちはひとりで生きていく、という選択肢も選べるけど、ドリスにとっては「結婚」という選択肢は、社会で生き残ってゆくための、必要欠くべからざるサバイバル技術のようなもの。
100年でどんだけ変わったか………………うむむむむ。

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